[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
しかし隊長である日番谷の言葉をさらりと流すと、松本は恐らく、世の男どもに絶大な効果を発揮するであろう笑顔とウィンク1つを残し、市丸との待ち合わせに向かった。
「……嘘ばっかり。――じゃあ、約束して」
乱菊はこんな直接的には言わないんだろうな・・・。
「吉良、ギンいるかしら?」
「あ、松本さん、こんにちは。えっと、市丸隊長は…」
「乱菊やないの、どないしたん?」
「――アンタ今日、何の日か覚えてる?」
「今日?せやなぁ………あかん判らへんわ」
「そ、あんたが覚えてよう覚えてなかろうがどうでもいいわ。兎に角今日1日、私に付き合って頂戴」
「…イヅル、ボクちょっと出て来てもええ?」
「え、あ、ど、どうぞ…隊長のお留守は僕が及ばずながら勤めますから」
「やて、いいよ」
「じゃ、行きましょ。吉良、ちょっと借りてくわね」
「はい、いってらっしゃいませ」
「ほな、後よろしゅうな。イヅル」
--
「ギン、誕生日おめでとう」
「ああ、ボク、今日誕生日やってんな」
「…ったく、アンタのそういう処が嫌いなのよ」
「そぉ?ボクは乱菊のそういう処が好きやねんけどねぇ」
-----------------
似非京風関西弁・・・失礼。
「乱菊」
久しく聞いていなかったその声に呼ばれ机から顔を上げた。
声のした背後を振り向けば、窓の直傍の木の枝に彼がいた。
「ギン・・・あんた何やってんの?」
「何て、乱菊に逢いに」
いつもの能面の笑顔で、しれっと応えるギンに、溜息を1つついて近寄る。
「隊長が他隊の執務室に、無断で入ってんじゃないわよ」
「まだ入ってへんよ」
「そうね、でも日番谷隊長にみられたら、あんた怒鳴られるわよ」
「せやけど、最近乱菊に会えへんし」
「・・・しょうがないでしょ。副隊長になったばっかで忙しいの」
「なぁ、今夜ボクんとこに来て?」
昔と変らない、甘えた声で強請る男に内心で罵倒する。
「イヤよ。それこそ隊長の私室に違う隊の副隊長が行ったりしたら、悪眼立ちするじゃない」
「ええやん。誰も気にせえへんよ?」
「私が気にするのよ。それに、何時に終るか判んないの」
「せやったら、ボクが乱菊のとこに行くし。それならええやろ?」
「それだって目立つでしょ」
「誰にもみつからへんて。僕そういうの得意やし」
「だから、帰れるかどうか判んないって言ってるでしょ」
「待ってるよって。帰ってきてな」
人の話をまったく聞かず、そう云ってすっと枝から消えたギンに声を上げた。
「ってちょっとギン!?」
勝手に云うだけいって、去っていったその人に舌打ちを零す。
昔と何も変らない・・・いつだって、自分勝手で、こちらを振り回すだけ振り回して去って行く。
「・・・ったくあいつ、待ってるって勝手に部屋に入ってる気じゃないでしょーね・・・」
一人ごちて、窓を閉めようとしたところで部屋の扉が開いた。
「松本・・・誰かいたのか?」
自分の上官である日番谷が、怪訝な顔で云う。恐らく自分の話声が聞こえたのだろう。
「ちょっと、珍しいキツネがいたんです」
「そうか・・・。化かされんなよ」
気のない様子で返事を返し、自分の机につく日番谷から眼を離し、苦笑する。
――もう、とっくに化かされてるかもしれない。
でもそれも悪くない。
そのキツネは、自分で逢いに来る位には、あたしを気に入ってるみたいだから。
------------------------------------
執務室にこういうシチュエーションが出来そうな窓があるのかとか、その辺はご容赦下さい。